デジタルマーケティング支援事業(SNS・ECサイト・Web広告運用等)を展開する株式会社Tsuzucle(本社:東京都港区、代表取締役:森祐太 )は、D2Cの家具ブランド「KANADEMONO(かなでもの)」を展開する株式会社bydesign様を、Instagramアカウント運用代行を通してご支援させていただいております。

今回はブランド公式Instagramアカウント「KANADEMONO」のフォロワー10万人突破記念として、株式会社bydesign 取締役社長の石川森生様、マーケティング担当の金森様をお招きし、弊社代表の森、SNSマーケティング担当の土佐が「Instagram活用によるD2Cサービスの世界観構築と、事業の成長」についてインタビューさせていただきました。


【推定読破時間:7分】

 

----それではよろしくお願いいたします。 まずbydesign様のサービスについて教えてください。

株式会社bydesign 取締役社長 石川森生氏(以下、bydesign 石川氏)

端的に言えば、家具のD2Cサービスです。

主軸は木の天板と金属脚を組み合わせて作る「THE TABLE」というテーブルのプロダクトで、そこにサイズオーダーの要素を掛け合わせることでお客様の空間にぴったりパーソナライズされた家具を提供しています。

国内の家具市場は既に大手企業による寡占状態ですが、一般的には価格が高く納品に一ヶ月以上はかかるサイズオーダー家具のマーケットにおいて、市場価格の約半額かつ注文から最短で5営業日後に出荷するというサービス設計をしています。

----オーダー家具なのに短納期で低価格という強みがあるということですね。

そのKANADEMONOの公式Instagramアカウントが運用13ヶ月目で10万フォロワーを突破したとのことですが、運用を通して達成したかったことは何ですか?

bydesign 石川氏:

KANADEMONO独自の「世界観」をSNS上に構築し、それに共感してくれる人を集めることです。そしてブランド名「KANADEMONO」で検索してもらえるようにすることです。

テーブルを作っていざ売ろうと検索広告を出そうとすると、プレイヤーが多すぎてCPA(Cost per Action:顧客獲得単価)が高騰してしまっているので、予算の少ないベンチャーにはかなり厳しいです。

さらに、ニトリ・無印良品・IKEA等、日本の家具マーケットには企業努力と規模によって高品質低価格を実現する圧倒的なプレイヤーが既に複数存在します。そこにベンチャーが同じ土俵で立ち向かったとしても到底勝てません。

ではどうするのかと言えば、世界観を作り上げることによって、競争原理の働かないSNS上で共感する人たちに集まってきてもらう。そして、ブランド名で検索してもらうことで検索広告のCPAを大幅に下げる。これが重要です。

この戦略を基にInstagram運用を開始し、13ヶ月後の2021年12月にはフォロワー10万人を突破することができました。

Instagram運用によってブランド名が浸透しただけでなく、投稿への反応を通してリアルタイムなニーズやトレンドの把握もできたのは良かったですね。

----ありがとうございます。D2Cサービスには必要不可欠なマーケティング戦略として、世界観の構築が重要であるということですね。

「テーブル」として検索されるのではなく「KANADEMONO テーブル」として検索されるように世界観を作り上げていくということですね。

日々変化するアルゴリズムへの対応が課題だった

 ----KANADEMONOが家具のD2Cのブランドであるということで、Instagramの活用方法を「世界観作り」と捉えたと仰っていましたが、自社で運用している中での課題点はありましたか?

株式会社bydesign マーケティング担当者 金森氏(以下、bydesign 金森氏):自社でInstagram運用を始めた当初はアルゴリズム(Instagramがユーザーに対しどんな投稿をおすすめするか、ということを決定する仕組み)を攻略することに苦戦しました。

Instagramではトレンドが日々変わっていくので、その傾向を掴むことが特に難しかったですね。

やはり自社運用の場合は単一アカウントでの仮説検証しかできないので、Instagram全体の傾向を見極めた上で投稿内容を対応させていくというのは非常に難しいと感じていました。

フォロワーさんの属性や傾向も時間と共に変化していくので、そのニーズに応える運用も自社運用だと限界があるなと思います。

例えば、運用開始初期は温かみのあるデザインの家具の受けが良かったのが、今はシンプルで冷たいデザインの家具の方が受けが良くなっていたことなどです。

Instagramのアルゴリズムに対応しつづけること、ユーザーのニーズに応えられるコンテンツを発信しつづけること、この2点が企業の担当者ベースの自社運用では難しいと思っています。

 
    

暖色系インテリアの投稿 ※1
寒色系インテリアの投稿 ※2

ベンチャー企業が大手企業にマーケティングで勝てる切り口とは?

----企業の担当者ベースの自社運用では「日々変化するアルゴリズムに対応すること」や「ユーザーのニーズに沿ったコンテンツを発信しつづけること」が難しいと感じられていた中で、最終的にTsuzucleに依頼することを決められた理由は何でしたか?

bydesign 石川氏:

SNSでのブランディングという感覚的な世界のことを、非常にロジカルに再現性を持ってやっているなと感じたのが決め手でした。

今のマーケティングは顧客とのタッチポイントが多く、媒体ごとのCPAが見えにくいという課題もあります。そこについても、多くのクライアントを担当しているからこその知見・経験を持つTsuzucleさんにお願いしたいと思いました。

最初はかなりざっくりと、「フォロワー数」と「エンゲージメント率」の2つをKPIとしてお願いしました。高いエンゲージメント率を維持したまま、フォロワー10万人を目指してほしい、といった感じです。

D2Cマーケティングで重要な世界観を確立させるまでのInstagram運用

----自社での運用に限界を感じていたKANADEMONOのInstagramアカウントの運用を代行させていただくにあたって、「フォロワー10万人」と「エンゲージメント率の維持」というシンプルなKPIを達成するために、どのような戦略を立てたのでしょうか?

株式会社Tsuzucle 取締役社長 森 祐太(以下、Tsuzucle 森):

Instagram運用は会社やそのアカウントのフェーズによって意識するところが変わってきます。KANADEMONOさんでもフェーズごとに設計した戦略で運用を行いました。

初期はKANADEMONOさんのブランドイメージを言語化するために、KANADEMONOさんと弊社で細かいところまで徹底して議論していました。また、Instagram運用で最も重要となる撮影と投稿のディレクションも行わせていただきました。

ブランドイメージが言語化されると、次のフェーズでは仮説検証数を増やして「このアカウントでフォロワーが伸びる方程式」を探っていきました。

この部分では、ユーザーのニーズを探りながら運用をアルゴリズムに適応させるために、とにかく仮説検証の数を増やすということに注力します。

例えば、日々の投稿では「エンゲージメントを高めるための投稿」や「認知を獲得するための投稿」といったように、ひとつひとつの投稿の目的を戦略から逆算して定めるようTsuzucle側でディレクションをさせていただきました。

実際の投稿画像においてはKANADEMONOさんの担当者様のセンスを組み合わせていただき、お互いの強みが最大限発揮されるよう運用を行いました。

そして、ある程度アカウントが伸びていくフェーズになったら、UGC(User Generated Contents:顧客が作成したInstagram上の口コミ投稿)を増やしてブランド認知の拡大を図っていった、というのが全体的な流れです。

これらフェーズに合わせた施策の実行と同時に、KANADEMONOさんから他媒体の広告のオーガニック流入数、CPC(Cost Per Click:クリック単価)、CVR(Conversion Rate:コンバージョン率)などの数値を共有していただきながら、予算の調整も行っていただいていました。

----長期的にブランドに寄り添う形で戦略を立てて実行していったということですね。

具体的に、日々の投稿ベースではどんな工夫をされていましたか?

株式会社Tsuzucle SNS運用・コンサルティング担当 土佐(以下、Tsuzucle 土佐):

投稿ベースでもアカウント規模のフェーズを意識しながら施策を変えていました。

初期の段階では、「アルゴリズムを攻略する」という目的のもと、「拡散されやすい検索タブでいかに上位に表示させるか」という視点で、全投稿のハッシュタグやコンテンツの内容を検証していきました。

例えばハッシュタグについては規模に着目するといったイメージです。

ハッシュタグとひと口に言っても、投稿数が100万件あるような広く使用されているものもあれば、1000件しかない比較的小規模なものもあります。

規模が大きいハッシュタグは検索回数が多く目に留まりやすい一方で、上位表示させるのが難しくなります。そのため、フォロワー数が多くない初期の段階では、比較的小規模のハッシュタグで上位表示される投稿の特徴を分析し、フォロワー数が増加するにつれてハッシュタグの規模を変えていく、という施策をとっていました。

----不明瞭なアルゴリズムのなかで、「いかに発見タブ上部に投稿を表示させるか」という勝ち筋を見つけるために、アカウントの状態に合わせてハッシュタグの最適化を進めていったのですね。

投稿するコンテンツの内容づくりは、多くの企業が悩んでいるところだと思いますが、どのように工夫していたのですか?

Tsuzucle 土佐:

投稿作成においては、特に「投稿の役割を明確にする」という点で工夫していました。

素材に関しては、もともとKANADEMONOさんのカタログで使用していた写真が非常に魅力的なものだったので、それをInstagramでも活用させていただきました。その際にも、ただ流用するのではなく、世界観を表現するという観点からそれらの写真を様々な条件で分類し、目的別に投稿作成を行っていました。

一例としては、「新商品を紹介する投稿」、「文字入れ投稿」、顧客が実際にKANADEMONOの家具を使っている場面を収めた「UGCをリポストする投稿」などです。


新商品の投稿 ※3

 

また、KANADEMONOのInstagramでは、「購入を検討されている方」から「理想のインテリアをただ眺めていたい方」まで幅広いニーズを持った方がフォローしてくださっているので、「いいね」や「保存」といったエンゲージメント率を中心に仮説検証を行い、フォローしてくださっている方のニーズを細かく確認しながら投稿内容を最適化させていきました。

----そうすることによって、フォロワー数のKPIだけでなく、アカウント全体のエンゲージメント率のKPIも両立して高めていったのですね。

 

Instagramという情緒的な世界と事業の論理性

----Instagram運用の長期的な戦略と日々の投稿ベースでの戦略・工夫についてお話をお伺いしましたが、やはり仮説検証をこなすということが重要なのですね。

そもそもSNS運用に投資するという判断はどのように考えていらっしゃるのでしょうか?

Tsuzucle 森:

広告によるマーケティングは単価5万円の机一台のCPAが1万5000円になってしまうため、予算の限られるベンチャーには厳しい​​。そこからSNS上で世界観をつくるという選択をしたと思います。

KANADEMONOさんの場合、「SNSに投資をする」という判断はどういう指標で見ていたのかが気になりました。

bydesign 石川氏:

現代のマーケティングにおいて、SNSへの投資判断は非常に難しいと思います。

顧客との接点が複雑で各媒体の境目が”溶けてきてしまっている”ため、SNS運用や検索広告運用それぞれについて投資対効果を単純に測ることができないというのが厄介ですね。

少し前のマーケティングは顧客接点において考慮するべき要素数が少なかったため「ここを抑えたら勝ち」というのがわかりやすいイメージでした。要するに、「ここに投資すれば売れていく」という力の入れどころをある程度知ることができたということです。

片や今は広告媒体が複雑に重なっていて、CVの因子が多すぎるために何が要因なのかわからない、最終的なCVに影響する要素が横断的すぎて投資判断が難しいというのが現状です。

CVに影響する要素が横断的なので、運用する媒体のうちSNS単体で見ると費用対効果が全く合わない。特に大手企業においては、これが原因でSNS運用・SNS広告への投資が承認されないことが多いと思います。

だからこそ、原始的な意味での広告、認知拡大の為の広告と割り切って投資判断ができるベンチャー企業が有利な状況なのではないかと思います。

費用対効果が見えない中で我慢してじっとSNS運用やSNS広告に投資をしていく。そうすると、徐々に検索ボリュームが増えていったり、他媒体でCPAが合いだしたりしていきます。

そうして全体としてCVが増加し、長期的に許容できるCPAに収まるようになっていきました。

Tsuzucle 森:

TsuzucleがSNSだけではなくて広告運用のコンサルティングや事業ディレクションにも関わっているのはまさにその側面があるからです。

広告だけではなく、より本質的な商品や事業を含めたディレクションまで入らせていただくことで結果を出せているのだと思います。

ここから単体でみると曖昧で効果が見えづらいと感じるSNS運用ですが、じっと堪えて仮説検証を回し続ければ自ずと結果は見えてきます。実際に仮説検証回数と、売上の向上やフォロワーの増加には相関性があることもわかっています。

しっかりと戦略立てて試行し続けること、これに尽きると思います。

----結果を出すには仮説検証を回し続けることが必要ということですね。また、SNS運用、広告運用、と完全に分けて考えるのではなく、それぞれが複雑に影響し合うことを前提に、全体として長期的視点でCVを取りに行く戦略設計が大切ということですね。

「フォロワー数10万人」の次の可能性とは?

----ここまで10万人を突破するまでに行ってきた施策や、投資判断の基準などをお伺いしてきましたが、KANADEMONOさんのフォロワー数が10万人を超えた今、次に目指したいことはありますか?

bydesign 金森氏:

今期はフォロワー数でいうと20万人に持っていきたいと思っています。

bydesign 石川氏:

「Kanademono BASE」というオフラインの体験型ショールーム(代々木八幡、完全予約制)もできたので、それも活用していきたいですね。

Tsuzucle 森:

フォロワー数10万人を超えてくると、かなりのロイヤルティがついているので他のアカウントとコラボとかしてみても良いですね。いかに世界観をキープしつつ可能性を広げていけるか、そこに注力して取り組んでいきたいと思います。

また、Tsuzucle全体としては、SNS運用・ECサイト運用をさらに論理的に再現性を高めて行えるよう取り組んでいきます。

効果測定が煩雑で投資判断が難しい面もありますが、様々な企業様がSNSやWeb広告の可能性を最大限活用できるよう、デジタルマーケティングディレクションのロジックでの解決に全力を尽くしていきます。

----結果が横断的に現れている現代では、ECサイトのマーケティングをロジカルに証明できるようになることは非常に求められていることだと思います。株式会社bydesign 石川さん、金森さん、株式会社Tsuzucle 森さん、土佐さん、本日はお時間をいただきありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします。

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株式会社bydesign「KANADEMONO」公式サイト

株式会社bydesign「KANADEMONO」公式Instagram

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